インタビューINTERVIEW

インタビュー

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脳神経外科 顧問医

吉田 和道(よしだ かずみち) 先生

PROFILE

所属・職名
京都大学医学部附属病院 脳神経外科 講師
専門分野
脳神経外科全般、脳血管障害、機能的脳神経外科
略歴
1994年 
京都大学医学部附属病院 脳神経外科 医員(研修医)
1995年 
滋賀県立成人病センター 脳神経外科 修練医
2001年 
財団法人 倉敷中央病院 脳神経外科 医師
2010年 
京都大学大学院医学研究科 脳神経外科 助教

なぜ脳神経外科の医師になろうと思われたのですか。

工学部に進むべきか、医学部に進むべきか、2つの進路でずっと迷っていました。高校2年生のとき父にがんが見つかり、実家を飛び出すのが難しくなったことから、医学部に進んで、医師になることを決意しました。

その中で脳神経外科を選んだのは、専門医としての個人技が求められる点に、やりがいを感じたからです。学生の判断ですから、それが正しい評価だったかは別として、脳神経外科は比較的新しい診療科で、まだまだ進歩の余地が残されていると感じました。
つまり、術式ひとつをとっても、定型化されていない"とりわけ高度なスキルが求められる診療科"という印象があったんです。

実際に脳神経外科に進まれて、やりがいに感じていることを教えてください。

外科医として技術を追求するのも、もちろんひとつの生き方だと思います。その一方で、技術の向上とは直接関係しませんが、治療で初めて得た情報から病態に迫り、患者さんに還元する研究も意義深いと考えています。研究と臨床では異なる側面がありますから、そのバランスを意識しながら過ごした日々は、無駄ではなかったと実感しています。

吉田先生が医師として最も大事にされていることは、バランスですか?

ひとつの病気に対して内科治療と外科治療があって、どちらを選んでも結果が一緒だとしたら、外科治療を選択してはならないと思います。"手術で治せるからなんでも手術"ではなく、手術適応を厳格化することも、外科医としての責務だからです。

医師は患者さんに対し、治療方法や手術リスクなどを説明する義務がありますが、説明の仕方次第でいくらでも持っていきたい方向に誘導することができます。たとえ同じ病態であっても、不安を煽って手術に向けることもできますし、手術が必要ないと考えたら安心を与える方法もあるんです。

よい医療とは、病気そのものを治すことだけでなく、患者さんに最善・最良の診療を提供すること。治療方針の説明ひとつをとっても、「自分の家族が同じ状況だったらどうするか」を考えて診るように気を付けています。同じ状況で、同じ病態の方が家族だったとき、手術をするなら手術を選びますし、しないということであれば別の方法を導き出します。

脳卒中は日本人の死因の第4位であり、5人に一人は罹患すると言われています。近年の傾向をお聞かせください。

脳卒中は、大きく「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」に分けられます。近年の傾向という意味では、「脳出血」の患者数は減少し、一方で「脳梗塞」は増加の傾向にあります。その原因として考えられるのは、運動不足と食生活の変化です。
特に、コレステロールの摂取量が増えるということは、脳梗塞の原因となる「動脈硬化」の発症リスクを高めることにもなり、生活スタイルの欧米化は、脳梗塞と深く関係していると考えられています。また一部で、日本人の食生活におけるコレステロール値は、アメリカでの平均値を上回ってきているという話もあります。
元々、日本人の脂肪の代謝能力は白人よりも低いはずですから、同量の脂質を摂取すれば、日本人の方が高脂血症になるのは明らかですよね。今後も脳梗塞は増加の一途をたどることでしょう。「くも膜下出血」に関しては、欧米に比べて多いという傾向に大きく変化はありません。

脳卒中の代表的な前兆や初期症状についてお聞かせください。

「くも膜下出血」と「脳出血」のふたつは、前兆がない場合がほとんどです。「脳梗塞」は、動脈硬化によって脳動脈・頚動脈が狭窄して起こるタイプと、不整脈が原因で心臓から血栓が飛んで起こるタイプに分かれますが、動脈硬化が原因の場合、大きな脳梗塞に至る前に「一過性脳虚血発作」といって一時的に脳梗塞の初期症状が現れます。
具体的な症状は、一時的な手足の脱力やしびれが体のどちらか一方に起きる、片目が膜がかかったように見えなくなる、言葉が出なくなる...などです。脳の場所や障害の程度によって、起こりうる症状は異なります。一過性の症状ですから、重要視されない方も多いようですが、そのまま放置しておくといずれ大きな発作が起こる恐れがあります。つまり、発症を未然に防ぐ最後のチャンスなんです。

脳卒中の予防のために、日ごろから注意すべきことはありますか?

生活習慣的な話でしたら、運動と食生活、その他の生活習慣です。運動は定期的にやりましょう。食生活に関しては、食塩と動物性脂肪の摂りすぎには注意してください。あとは、アルコールを適量に抑えることです。結局それは、動脈硬化の危険因子となる高血圧、高脂血症、糖尿病を患わない、あるいは、重症化させないためのリスクマネージメントとなります。

脳卒中の早期発見のためには、どのような検査が特に有効ですか。

一過性脳発作が起こった場合は、超音波検査で血液の流れや血管壁の状態を調べますが、無症状の方が予防のために行う検査であれば、超音波検査とMRI検査がメジャーです。頚動脈の超音波検査では、動脈硬化の進行度合いを早期診断できますから、動脈硬化による脳梗塞の危険性の予測にもつながると考えます。MRI検査は、症状のない動脈の狭窄や小さな梗塞の発見に有効です。

脳卒中はがんと同じく、生活習慣病が大きく関係していますが、一部のがんの要因とされる家族歴の影響もありますか。

動脈硬化を起こしやすいかどうかで申し上げると、動脈硬化のリスク因子をどれだけ持っているかが影響します。高血圧、高脂血症、糖尿病は遺伝的になりやすい家系もありますから、そういう意味では「間接的に関係している」という表現が正しいかもしれません。

先ほど「食生活は非常に大事」と申しましたが、よく考えてみてください。家族って毎日、同じものを食べていますよね? 同じものを食べてきた集団という見方をすると、「高食塩の辛い物が好き」「動物性脂肪をたくさん摂っている」集団であれば、高血圧の基準に達している可能性は非常に高いです。そういう意味での家族歴もあります。ご家族に脳梗塞、脳出血を患われた方がいらっしゃるのであれば、一般より注意して検査を受けられることをお勧めします。

脳動脈瘤は、人間ドックで見つかっても実際に破裂することはほとんどなく、くも膜下出血に至る確率は極めて低いとされています。人間ドックで脳動脈瘤が見つかったとき、どのような診療方針がとられていますか。

今の時点で、未然に動脈瘤の破裂を予防するには、「開頭術」もしくは「カテーテル手術」しかありません。つまり、100%安全な予防治療はないに等しいんですね。ほとんど無症状で、極めて破裂率の低い病気に対して、リスクを犯してまで治療を行うか否かの判断は、実は、外科医としていちばん難しい診断だと思います。

「未破裂脳動脈瘤」の診療で最も難しいのは、手術そのものよりもこの判断で、それこそ患者さんやご家族も納得された形で、正しく判断できることが医師の力量でもあります。具体的な数字を挙げると、5㎜の大きさで一年以内の破裂確率が1%とした場合、80歳の方であれば平均余命を考慮しても、経過観察が妥当だと思うんです。逆に、同じ病気が40歳で見つかったとしたら、予防手術の推奨度合いは上がります。

「未破裂脳動脈瘤」の手術適応について、ガイドラインは設けられているのですか。

おっしゃる通り、未破裂脳動脈瘤の中でも、破裂しやすいものは統計学的に分かっています。小さい脳動脈瘤は破裂しにくいと考えられています。破裂しやすい脳動脈瘤は、大きさが5mm以上で不整形のもの、そして内頚動脈瘤や前交通動脈瘤など、破裂のしやすい場所にあるケースです。これらに当てはまり、年齢が70~75歳以下の方には、原則として手術を推奨しています。

とはいってもあくまでも予防治療ですから、最終的に手術を受けるか否かの判断で大事なのは、患者さんの価値観です。要は検査結果だけをもとに、「あなたは手術」「あなたは手術しなくてもいい」と決められるものではないということです。例えば、破裂リスクが高くとも、くも膜下出血を引き起こさずに天命を全うする可能性もある中で、「予防的な手術は絶対に考えない」とおっしゃるようなら、手術を無理強いすることはありません。一方で、小さい脳動脈瘤で「私の家族なら手術をしません」とブレーキをかけても、「これを抱えて生きるのは嫌」と不安を抱かれる方もいらっしゃります。そこが医師としていちばん難しいところなんです。

私が大切にしているのは、医師としての立場から、勧める・勧めないの意見表明をした上で、患者さんの不安感や価値観を考慮して、最終的な治療方針を決めること。それには、外来診察という限られた時間内で、いかに患者さんとの信頼関係を築くかがポイントになります。検査結果だけを突き付けて「ガイドラインはこうなっていますから、あとは自己判断で決めてください」というのは、一種の責任放棄だと考えます。

手術をしない選択をされた場合、患者にとっては強い不安が残ると思います。どのようなケアを行われていますか。

経過観察する中で脳動脈瘤が増大したり、あるいは形状が変化する場合、破裂に向かっているのは医学的にも知られていますから、半年~一年に一回のペースでMRI検査を受診していただいています。「手術をしない」と決めた方には、検査の日以外はなるべく忘れて生活していただいた方が精神衛生上よろしいので、過度に不安を煽らないようにしています。

先ほど、同じ数字を説明するのでも手術を勧める場合と、ブレーキをかける場合で言い回しを変えていると申し上げました。くも膜下出血は、患ってから治療をすると3人に1人は亡くなる病気です。それを逆転の発想で申し上げれば、くも膜下出血を患ってからも、治療を行えば3人に2人は助かるわけです。手術を選ばなかった患者さんに不安を煽る必要もありませんから、「たかだか1年間で破裂する可能性は1%よりはるかに低い。仮に破裂しても、3人に2人は元気になりますから」と言ってあげた方が安心されますよね。逆に破裂リスクが高そうで、手術をした方がいいと診断した方には、「破裂率は低いと言えど、破裂したら3人に1人は亡くなっていますよ」とご説明します。言い回しが違うだけで、どちらも嘘ではないんです。

各疾患に対する主な治療法、あるいは治療法の選択基準をお聞かせください。

「くも膜下出血」は、破裂してからの話になると緊急手術です。最初の出血が起こってから24時間以内に再破裂する可能性が高い疾患ですから、再破裂による被害の拡大を防ぐことが手術の目的となります。方法としましては、一つ目は、開頭手術であるクリッピング術です。血管の根元にチタン製の器具をかけて閉塞することで、動脈瘤に血液が流れ込まないようにします。二つ目は、カテーテル治療のコイル塞栓術です。カテーテルを動脈瘤の中まで通して、先端から金属製のコイルを詰めることで、動脈瘤へ血液がいかないようにします。

「脳出血」は、脳内の血管が破綻して脳内に出血を生じる疾患ですが、残念なことに出血によって壊されてしまう脳の機能が回復することはありません。手術の目的は、出血を取り除くことで脳への圧迫を解除し、二次的な被害を減らすことになります。

「脳梗塞」には、tPA(アルテプラーゼ)という血栓を溶かす強力なお薬があります。頭蓋内の太い血管が詰まって緊急搬送されてきた場合、発症から4.5時間以内の超急性期であれば、tPAによる血栓溶解療法を行います。それでも無効な場合は、カテーテルを入れて血栓を直接回収してくる治療が普及しており、それにより脳梗塞の治療は非常に成績が良くなっています。

脳卒中は再発率が非常に高い病気です。そのための予防や治療ではどのようなことが必要になるのでしょうか。

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これは先ほど申し上げた「高脂血症、高血圧、糖尿病に気をつけましょう」と共通します。動脈硬化による脳梗塞の場合、動脈硬化なんていうのは全身の病気ですから、全身の血管に同じようなことが起きても不思議ではありません。
ですから脳梗塞を治療するだけでなく、ほかの危険因子も取り除くことが大切だと考えます。

不整脈そのものを根本的に治すことができない場合は、血液をサラサラにする抗凝固薬を規則正しく飲んでいただく予防が大事になってきます。

手術時に再発率を下げるために気をつけてらっしゃることはありますか。

頚動脈狭窄により、脳梗塞が引き起こされたとしましょう。患者さんは退院されるときに「無事手術を終えて、血管も広くなって安心」と思われるかもしれませんが、動脈硬化は全身の病気です。今回はたまたま脳に見つかったけれど、ほかの部位に同じようなことが起きても不思議ではありませんよね。手術を終えたからすべてが終わりではなく、生活習慣に気を付けること、内科治療を継続することは一生ものです。ですから脳神経外科の専門医と言えど、手術だけでなく全身を診るように日ごろから心がけています。

脳卒中を発症すると、治療後もリハビリや介護が必要となることが多いですが、治癒をすることはないのでしょうか。

脳梗塞は、MRI検査を行ったときに「ここで脳梗塞が起きています」と診断される部分ですが、残念ながら機能が元に戻ることはありません。ただし、リハビリをする中で「症状が緩和された」はありえることで、それは、脳梗塞でやられた神経・組織周辺の神経細胞を強化することを意味します。

厳密な意味で、脳梗塞を起こしてしまった機能をもとの健康な組織に戻したり、復活させたりする再生治療は、将来の治療として目指しているところです。

外科治療において、小さい穴を頭蓋骨に開けて針・内視鏡をいれることにより、ダメージを最小限にとどめる低侵襲手術の現状、課題についてお聞かせください。

脳神経外科手術においても、内視鏡手術がどんどん進化し、患者さんに負担の軽い手術が提供できるようになっています。脳出血ひとつをとっても、私が研修医の頃は開頭術が当たり前でしたが、今は内視鏡で出血個所を確認しながら除去することができます。
一方で、開頭術と比べたときに、内視鏡下では操作範囲が非常に狭く、手術中に大きな血管を損傷して出血するなど、予想外の事態が起きたときに対処しづらいという欠点もあります。また、操作する空間規格が狭いがゆえに、治療に制限が加わるケースもあります。
今後、器具はどんどん進歩しますから、導入して技術を向上させなければならない一方で、何でもかんでも最新技術に飛びつくのではなく、有用性と安全性のバランスを保ちながら新しい技術を導入していくことが重要と考えます。

吉田先生は「もやもや病」の専門外来のセンター長でいらっしゃいます。京大病院では世界で初めて「もやもや病」のバイパス手術を行って以来、多くの患者を診察されているそうですが、この病気の特徴や治療法について教えてください。

もやもや病は、日本で発見された原因不明の脳の病気で、「Moyamoya Disease」として国際学会でも通用する疾患です。日本やアジア人に多いという特徴があります。

発症年齢には2つの山があり、ひとつ目は幼少期、ふたつめは中高年です。幼少期の場合は、一過性の発作や脳血流不足により症状が現れ、中高年の場合は、脳梗塞の発症で見つかるケースと、脳出血で発症するケースがあります。

原因は明らかになっていませんが、脳の中の非常に太い血管がゆっくりと狭くなり、脳が虚血状態に陥ります。治療に関しては、無症状の方は経過観察が基本です。症状が出始めた、あるいは脳血流検査の結果、非常に血流が不足している場合に、バイパス手術を行います。具体的には、頭部の皮膚や皮下組織に影響している血管のうちの一本を脳の血管につなぎ、自然に交通する環境を整える手術です。

吉田先生のご専門のひとつ「頚動脈狭窄」の特徴や治療法をお聞かせください。

動脈硬化が基盤で、日本で非常に増えている疾患です。進行すると脳梗塞を引き起こすこともあります。先ほど、くも膜下出血、脳出血、不整脈が原因の脳梗塞は前兆・予兆がないというお話をしましたが、頚動脈狭窄は「一過性脳虚血発作」といって比較的軽い発作を何度も繰り返しながら、段階的に悪化していく場合もあります。例えるならば、心房細動が原因の脳梗塞が"一発ノックアウト型"だとしたら、頚動脈狭窄タイプの脳梗塞は、軽い発作を繰り返しながら症状が進行する"レバーパンチ型"です。

逆に考えると、早期に的確な診断ができれば、それに対する治療法もありますから、悪化を未然に防ぐことができます。ある意味、検診の意義がある疾患と言ってもいいでしょう。治療としましては、まずは動脈硬化対策をしていただきます。ある程度進行した方には、血液をサラサラにする抗血小板薬や、コレステロールを下げるような薬を服用していただく内科治療がメインとなります。それでもどんどん狭まり、軽い発作を起こした場合は、血管を切開して狭窄の原因を取り除く「頚動脈剥離術」か、血管内にカテーテルを入れて内側から拡張する「ステント留置術」をとります。

脳卒中治療のスピードアップを目的に、臨床分野では脳内の血栓の場所を素早く特定する装置(脳スキャン術)、診断分野では光で脳の血流を測る新技術の開発などが進んでいるようです。このような新技術の導入状況や課題について、可能な範囲でお聞かせください。

近年、撮像の方法は進化しており、脳の血管も非常に細かなところまでMRIで画像化することができます。また、近赤外線を脳の表面からあてて脳内の血流を測る光トポグラフィー検査も進化しています。実際、くも膜下出血の合併症である「脳血管れん縮」においては、近赤外線のシールを貼り、24時間持続で、血流をモニターで確認することも行っています。

京大病院の取り組みをご紹介するなら、ひとつは、無症状で見つかった頚動脈狭窄の患者さんに内科治療・外科治療のいずれを推奨するべきか、正確に判断する画像診断。もうひとつは、ハイブリッド手術室です。動脈瘤では開頭術とカテーテル治療、頚動脈狭窄では切開手術とカテーテル治療があると申し上げましたが、それらを同時に行えるのがこの手術室です。治療困難な患者さんの場合は、その両方で同時に対処する治療法もあります。

京大病院では昨年11月、iPS細胞を使った再生医療において、世界で初めてパーキンソン病患者の脳に移植を行ったと発表されました。脳神経外科分野における再生医療の今後の展望について、お聞かせください。

パーキンソン病の移植医療は、脳の中で一定の物質を作り出す細胞(ドーパミン産生細胞)が不足しているため、その細胞を移植して再生させるというものです。それを脳外科領域で更に発展させますと、先ほど脳出血、脳梗塞で傷を負った組織は回復しないというお話をしましたが、それを移植で再生させる、真の意味で神経のネットワークを再構築させるのが理想のゴールだと考えています。実際、それに向けて研究を進めている段階です。将来的には移植細胞で置き換えて、破綻した神経のネットワークを再構築し、失われた機能の回復が成しえればいいと願っています。

吉田先生が健康維持のために心がけていること、取り組まれていることがあれば教えてください。

患者さんに「禁煙しろ」「お酒は控えろ」と言っている手前、私自身も気をつけなければならないのですが、なかなかお酒をやめられないのが現実です。ですが、ここ数年は晩酌を週末限定するなど、なるべく飲酒量を減らすように注意しています。運動に関してはなかなか時間がとれませんが、ここ数年続けているのは院内エレベーター禁止です! またランニングサークルを参加し、週末だけ10kmほど走っています。

最後に、関西メディカルネットの会員の方々へメッセージをお願いします。

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まじめな話をしますと、豊かな暮らしに健康は必要条件ですが、人生の楽しみと健康にいいことは対立しがちだと思いませんか? ですから、健康を突き詰めすぎるとストレスが生じ、逆に不健康な気すらしてしまうんです。検診は、車でいう車検だと思って定期的に受けましょう。ですが普段は、無理をしてまで節制する必要はありませんから、やはりバランスですね。

次に、脳ドッグの受診方法として考えていることをお伝えします。脳ドッグを受けると、約5%の方に「未破裂脳動脈瘤」が見つかります。初めて脳ドッグを受ける方って、「大丈夫と言われるに決まってる!」というある種の希望的観測を持っている方が大半ですから、それで「未破裂脳動脈瘤がある」と言われるとショックを隠し切れないですよね。ですが、あったらあったで日常生活を注意して送ることができますし、手術をしなくても定期検査をしていたら大きな問題には発展しないことも多いですから、その結果を前向きに活用すると意味があります。ある程度の可能性で病気は見つかるという覚悟のうえで、それを発症させないための日常の注意として、車検感覚で受診していただけたら健康維持につながるのではないでしょうか。

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